刻印







昼間だというのに頭上には

大きく空で輝く北斗七星

その隣に寄り添うように

静かに輝く蒼星がゆらゆら

今にも流れ落ちそうに

儚く、怪しく瞬いて

まるで今の自分自身のよう

メディスンシティーで捕えられ

公開処刑に晒される自分

己の迂闊さで招いた事だ

この身を戦場に委ねた時から

戦士としてそれ位の覚悟は出来ているつもりだった


だけど


心残りがあるとすれば

村の事

皆の事

そして―――…

痛みで目も霞み始め

意識が薄らごうとし

処刑執行の幕を

降ろされる瞬間



――――




拘束から解き放たれ

崩れるように落ちる自分に手を添える貴方

そんなに優しく差しのべないで

支えないで

「馬鹿な、俺などの為に…」

――哀しく呟かないで

貴方を楽にしたいと云う思いで

選び採った行動は

自分が楽になりたかっただけ

このまま何も出来ず貴方が壊れ逝くのを

見たくなかっただけ

どうあっても想いに答える事など出来ない自分が

仲間として、戦友として

なにかをしてあげられたらと

口実を作りその場から逃げた

そんな卑怯な女なのだ



貴方も知っているでしょう

村の為に弟を見殺しにした

血に汚れ

非情で冷たい女だと



(そう、切り捨てて)



貴方は知らないでしょう

楽にしたいという本当の意味

私が求めた薬の真実を



(お願い)




私は



あの人にも

貴方にも

誰からも




愛される資格など

有りはしないのだ



「…わたしをみつめないで」




己の背負う業

刻印(きず)と共に
       



ざくり




ざくり




砂音が大きく聞こえてくる――






おわり




BACK




inserted by FC2 system