この世の果て …







マミヤ・・・
あの日から
おれは お前を苦しめていたのではないか?
おれの愛は お前の重荷になっていなかったか?

もしも・・・
その時 が来て 
お前が おれの愛に応えてくれるなら
おれはこの場所で お前を待ち続けよう
そして ・・・
今度こそ あの約束 を果たそう
この場所で もう一度 お前とめぐり逢えたなら・・・







真っ白な雪の華を咲かせた街路樹を
白い息を吐きながら駆けてくる靴音




「レイ! 遅くなってごめんなさい」




長い間 待ち続けた
かけがえのない存在・・・
すぐにでも抱きしめたい気持ちを抑え冷静を装う




「マミヤ・・・
 おれも今来たところだ」




レイの肩にはうっすらと雪が積もっている
マミヤはその雪をそっとはらいながらレイの顔を覗きこむ




「相変わらず 嘘が下手ね」



「フッ・・・
 おまえにはなんでもお見通しだな・・・」




レイは冷えきったマミヤの手を握りしめると
そのまま自分のポケットに突っ込んだ




「あったかい・・・」




繋いだ手のぬくもりに幸せを感じるマミヤ




「レイ・・・私・・・
 あなたとの約束 守れなかった・・・」




「気にする事はない・・・
 きっと おれも 同じ事をしただろう・・・
 お互い 義の星のもとに産まれた宿命だな・・・」




「私もあなたと同じ星に・・・?」




「ああ・・・ 
 おれたちが 今ここにいるのも・・・
 その宿命なのかもしれん・・・」





こうしてもう一度めぐり逢えたのも
義の星の宿命・・・
今まで哀しい宿命に翻弄されてきたマミヤは
この時初めてその宿命に感謝していた






「レイ・・・
 待っていてくれて ありがとう・・・」




「マミヤ・・・ 
 おれは・・・ 
 お前を苦しめていたのではないか?」




黙って首を横に振るマミヤ




「私は、あなたの愛だけが心の支えだった
 苦しんでなんかいない・・・
 
 ただ・・・
 ちょっと泣き虫になったけだけ・・・」




「マミヤ・・・」




「レイ・・・
 わたし ずっと・・・」






続けようとした言葉は 唇で塞がれた






「レ・・・」





突然の口づけに驚きを隠せないマミヤ
頬を赤く染め 恥ずかしそうに俯く





「その続きは もう少し後で聞こう」




「え?」




「フッ・・・
 たまにはこういうのもいいだろう?
 待たされた分は しっかり返してもらわんとな」
 



「たまにはって!
 あなたはいつもそう 初めて会った時だって・・・」
 



「まぁ、そう膨れるな
 再会のキスに不満でもあるのか?」




「そ、そんなことないけど・・・・・・
 とにかく・・・  あの時みたいな事はもう勘弁よ!」




「フッ・・・ それは約束できんな」




口の端を吊り上げ悪戯な目をして答えるレイ
マミヤを見つめるその表情は優しくあたたかだ




「まったく・・・ あなたって人は」




しばらく見つめ合う二人・・・
だが、その沈黙に耐えきれなくなったマミヤが突然笑い出す 
それにつられてレイが笑顔で口火を切る




「だいたい お前が泣き虫なのは昔からだろう?」




「もう!意地悪ね・・・!! 
 
 でも・・・
 こんなに笑ったの 久しぶり・・・」







「マミヤ・・・
 おれは おまえが傍にいてくれれば それでいい・・・」




レイは あの日約束した純白のベールでマミヤを包み込むと
その細い肩を引き寄せ きつく抱きしめた





―― マミヤ・・・
   これからはずっと一緒だ・・・ ――






ようやく辿り着いたこの場所で
二人は 永遠を誓った












「マミヤ・・・
 さっきの続き 聞かせてくれないか?」




「何の事・・・? 忘れちゃったわ・・・」




「まぁいい・・・
 聞かなくても 顔にちゃんと書いてある」




「え?」




「お前も 相変わらず嘘が下手だな」




「ふん! 
 わかってるなら もう絶対言わないから!」




「フッ・・・そんな顔するな  美人が台無しだぞ!
 

 さて、これからどこへ行こう?」




「あなたとなら この世の果てでも…」




「おまえ
 そんな歯の浮くような台詞 誰に教わったんだ?」




「目の前にいる誰かさんに決まってるじゃない」




「フッ・・・ お前には敵わんな」






月夜に照らされた二つの影は
やがて真っ白な雪のベールに包まれ 消えていった





―― 愛してる  ずっとずっと前から…  ――








辛い過去も 悲しい想い出も 
全部置いて此処へ来た

マミヤ・・・

この場所で もう一度はじめよう
心の時計は これから二人で刻んで行こう
二人なら どんな事も
きっと乗り越えていける

マミヤ・・・
おまえとなら 
この世の果てでも・・・









― END ―









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*あとがき* 

 相変わらず駄文ですみません!!
 「心のひと…(世紀末のばら)」 のつづきです。 こちらは一応オリジナルです^^;
 せめて ”次の世界” では二人を幸せにしてあげたい… そんな思いを込めて書いてみました。
 
 レイは、「死兆星が落ちるその日まで女として精一杯生きろ」とマミヤに告げ 去って逝きますが
 当然のことながら、マミヤの死兆星が消えた事は 知らないままなんですよね。
 もしかしたら、マミヤをずっと見守りながらも、”その日” が来るまでどこかで待っているんじゃないかと思うと また切なくて…
 (レイの事だから、マミヤが幸せになってくれさえすれば、それだけで嬉しく思っているだろうけど…)
 
 タイトルの「この世の果て」は、二人がもう一度めぐり逢えた ”新しい場所” と思って頂けたら嬉しいです。
 最後まで読んで下さって有難うございました。




 


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