ENDLESS LOVE
 ~未来へ ~




彼が、この世を去ってから どのくらいの月日が経ったのだろう…
戦いを捨てた私は、彼の眠るこの村に 義妹と二人静かに暮らしていた。



「・・・レイが残した物は・・・たった一つだけ・・・
 お墓には何もない・・・
 最近、あの人がどこかで生きているんじゃないかって、
 錯覚してしまうことがあるわ・・・」


レイの形見の肩当を見つめ、マミヤが寂しそうに呟く。
月日が経つにつれ、彼のいない寂しさが増してくる。


「なんか、義姉さんらしくない・・・
 兄は、最期に義姉さんの為に戦う事ができて 幸せだったと思うわ
 そんな顔をみたら、兄さん、悲しむわ・・・。」


アイリは義星の妹・・・兄の死を受け入れ、強くなった。


「兄は、私の救出の為に、人間としての自分を捨てて戦ってきた・・・
 でも、義姉さんに出会って、人としての心を取り戻す事ができたの。
 だから、その時から、兄には自分の為だけに生きてほしいと願ってきた。
 兄が、心から愛した人の為に、戦う道を選んだのだから、
 たとえ、それが死であったとしても、私は、受け入れる事ができた・・・」


「アイリ・・・あなたは強くなったわね・・・
 それに比べて、私は泣いてばかり・・・」


「義姉さん・・・実は・・・渡したいものがあるの・・・」


アイリは小さな袋を差し出した。


「兄が亡くなった後、焼け落ちた小屋の残骸の中に、これが・・・」
 その中には見覚えのある物が入っていた。


「こ、これは・・・」


驚いて手にするマミヤ。


「兄が、最期に身に付けていたものよ・・・
 これは、義姉さんに持っていて欲しいの・・・」


「アイリ・・・でも・・・あなた、レイの形見は・・・」


「私には・・・これ一つあればいい・・・」


アイリは血に塗られたケープを握りしめた。


「私の救出の為に、兄が流したものすべて・・・私はこれだけでいい。
 私・・・義姉さんに対する兄の気持ちは、ずっと前から気付いていたの。
 兄は、嘘をつけない人だから・・・
 だから・・・二人が結ばれる事をずっと願っていた・・・。
 私はただ、義姉さんに兄の事を忘れないでいてほしいの・・・」


「アイリ・・・
 私は、あの日から、
 一日たりともあの人の事を忘れたことはなかったわ・・・
 あの人は・・・レイは、私の心の中でずっと生きているんだもの・・・
 忘れる事なんて、できる訳がない・・・」


「義姉さん・・・」


「ありがとう、アイリ・・・大切にするわ」






数日後・・・





「どう?アイリ、似合うかしら・・・。」


恥かしそうにマミヤが現れた。
マミヤは、アイリから譲り受けたレイの形見を使い、
彼と揃いの服を作っていた。


「ええ!とってもよく似合うわ」


アイリの言葉にようやくマミヤに笑顔がもどる。


「レイが生きていたら、これを着て二人で歩きたかったわ。
 ちょっと恥かしいけどね」


「きっと、村中の注目の的になったわね。お似合いのカップルだって!」


「うふふ・・・ありがとう、アイリ」


「義姉さんの笑顔、久し振りに見た気がするわ。
 最近、元気なかったから・・・。
 やっぱり義姉さんには笑顔がよく似合う・・・
 兄もよく言っていたもの・・・」


「アイリ・・・」


「義姉さん・・・なんか顔色悪いけど、大丈夫?」


「・・・ごめんなさい・・・最近、ちょっと体調が悪くて・・・」


「あまり、眠っていないんじゃない?・・・
 少し、休んだほうがいいわ・・・」


「そうね・・・そうさせてもらうわ・・・
 アイリ・・・今日は本当にありがとう・・・」


「私こそ、義姉さんの笑顔が見れて嬉しかったわ・・・」
 マミヤの部屋を出るアイリ。ふとある事に気が付いた。




ー 義姉さん・・・もしかして・・・ー





翌日、アイリは食事の用意をし、マミヤの部屋を訪ねた。


「義姉さん、心配だから、食事用意してきたの・・・」


「おはよう!アイリ。昨日は心配かけてごめんなさいね」


「起きていて大丈夫なの?」


「もう、大丈夫。昨日はよく眠れたわ。
 あなたのお陰で元気を取り戻せた・・・。」


「よかった、安心したわ・・・。
 ところで・・・・あの・・・義姉さん・・・」


躊躇いながらマミヤに話し掛けるアイリ。


「どうしたの?」


「体調が悪いって・・・もしかして・・・」


アイリはマミヤのお腹に視線を向けた。


「・・・もしかって・・・ま、まさか・・・」


自分のお腹に触れるマミヤ。


「そんな事・・・考えてもみなかった・・・」


「きっと、そうよ!」


「でも・・・」


アイリは戸惑うマミヤを連れ部屋を出た。





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「私と・・・レイの赤ちゃんが・・・」


マミヤは嬉しさを隠せなかった。


「良かったわね、義姉さん。私もついに叔母さんになるのね。」


「なんか・・・夢みたい・・・神様が願いを叶えてくれたのね・・・」


マミヤの目から涙が溢れる。


「やだ・・・嬉しいはずなのに・・・涙が止まらない・・・」


「義姉さん・・・」


アイリは優しくマミヤの背中を摩った。


「これから、母になるのだから、泣いてばかりはいられないわね・・・」


「義姉さんなら大丈夫!元気な赤ちゃん、産んでね。」


「ありがとう・・・アイリ」



     レイ・・・
     私達の赤ちゃんが、ここにいるのよ・・・
     私、夢のようで、涙が止まらなかった・・・。
     あなたからの贈り物…この小さな命、大切に育てていくわ。
     だから・・・ずっと見守っていてね・・・レイ・・・



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そして・・・ その日がやってきた。

「義姉さん!おめでとう!元気な男の子よ!」


「レイと私の・・・赤ちゃん・・・」


我が子を初めて抱くマミヤ。
その優しい笑顔はもう母親そのものだった。


「レイ・・・見える?
 あなたと私の赤ちゃんよ・・・
 産まれてきてくれて・・・ありがとう・・・」


小さな手を握りしめ、マミヤはつぶやいた。

「マミヤさん!!おめでとう!!」


懐かしい声に驚くマミヤ。


「バット!リンちゃん!来てくれたの」


「あったり前だろっ!レイとマミヤさんの赤ちゃん、早く見たくてさ!」


「わぁーかわいい!!天使みたい!」


「目元はレイにそっくりだな!リンどう思う?」


「うん・・・でも・・・なんかレイの事、思い出しちゃった・・・」


「なんだよ・・・リン・・・今日はめでたい日なんだぜ!
 泣く奴があるか!」


「うん・・・そうだね・・・マミヤさん、ごめんなさい」


「バット、リンちゃん、ありがとう。二人が来てくれてとっても嬉しいわ。
 きっと、レイも喜んでると思うわ」


「エヘヘ・・・レイが生きてたらメロメロなんだろうな~
 “バット!汚い手で触るな!”とか言われたりしてさ!
 やっぱ、性格はマミヤさんに似た方がいいな!」


「バット!レイに失礼よっ!」


「いいのよ・・・でも私に似たら間違いなく、気の強い子になるわね!」


部屋中が笑い声に包まれる。

「そうだ!義姉さん、名前はどうするの?」


「マミヤさん、もう考えてるの?」


「ええ・・・実はね・・・。」


「なに?なに?教えて、マミヤさん!」


「男の子だったらって、考えていたのが・・・
 レオ・・・獅子のように、強く逞しく育って欲しいから・・・。」


「レオ!・・・カッコイイ名前じゃん!!」


「きっと、レイのように優しくて、強い男の子になるね!」


「二人とも、ありがとう」


「マミヤさん、何かあったらいつでも俺達に言ってくれよな!
 俺達・・・レイやケンみたいに強くはないけど、
 ちょっとは、マミヤさんの力になれると思うんだ!」


「バット・・・しばらく会わないうちに、大人になったわね・・・」


「マミヤさん、バットはね、いつも私を守ってくれるの。
 こう見えて結構優しいし・・・」


「エヘヘ、照れるな。大切なものを守る事、レイが教えてくれたからな!」


「なんか、安心したわ・・・二人とも頼りにしてるわよ。
 レオが大きくなったら、一緒に遊んであげてね・・・」


「もちろんさ!なあ、リン!!」


「うん!!」






レイの遺志を継ぎ、逞しく生きる子供達・・・。
彼等の未来は、明るいものであってほしい・・・
そしてこの子の未来も・・・。
私は、女として・・・母として、強く生きる事をもう一度誓った。
未来は・・・この子供達に託されているのだから・・・。








ENDLESS LOVE
 ~未来へ~
  -END-





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★あとがき★
既に登場している、レイとマミヤの第一子?レオ誕生のお話です。
私の勝手な発想で、アイリを“義理の妹”に設定してしまいました。
原作、最終巻で、バットの前に現れたマミヤの服装を見て、レイの服とお揃い?
と思ったのは、私だけでしょうか…?(原先生の粋なはからいと思いたいです)
遺品が残っていた設定はちょっと無理がありますが、
どうしてもこのエピソードを入れたかったもので…(汗)
ラストは、原作でバットがマミヤさんに対して言った言葉を
思い出して書きました。
「愛する女の幸せを願ってこそ男!
かつてレイがあんたの幸せを願ったように…」
彼は、幼いながらも、レイの生き様に感銘していたんでしょうね。







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