カサンドラへ




〜 寝ぼけ 〜



きんきん

きらきら

星空輝く空の下

周りは深い眠りに沈むとき

またまた、カサンドラへの道中で

野宿と言うわけだが…

どうすればいいのだ――

俺は焦っていた

一つの毛布の中で

彼女が自分にしがみつくような形になっている

無論やましい事などしていない

眠っている女にどうこうするなど他人は知らんが

俺の本位ではない、むしろ彼女となら

ちゃんと意識のある同意が望ましいのだが――

今ここでそんな事を考えてもどうにもならないが…


少し整理してみると

何時ものように休める場所を探し

準備をし、落ち着いて、日が落ちたら

見張りをしていただけだった

(奴は、また見回りらしい…何処までいってるんだ?)


暫くした頃に隣にいた彼女がまたうなされていたと思えば

いきなりがばっとしがみつかれたのだ


別に女を知らない訳ではないが

彼女、マミヤは違う

なにしろ本気の女だ

大切にしたいと思っている


ぱちぱちと目の前の火が

燃える中じっとしがみつかれたまま

何もできずただ固まっている

……

わずかに震えているのを感じ

ずれた毛布を被りなおし彼女と

ひとつに包まるような体勢になる

ぬくもりを分かち合うようでこそばゆかったが


しばらくすると落ち着いたのだろうか

静かに呼吸を始めた

それに安堵しつつ

離れようと腕に手をかけるが

ぎゅっ

離すまいとしてか先程より

力が入るようになる

無理矢理動かして起こすのも忍びなく

されるままになり

これでは、自分がもたなくなりそうで

早く奴が帰ってこないかと考える



焚き火も燻り小さな火の粉になり

その灰から微かに

煙が出るようになった頃


…………………まだか

余りにも奴が帰ってくるのが遅すぎる

何かあったとしても奴の事だ

並大抵の事ではやられないだろう

むしろ奴を倒せる相手を探すのが大変だ

気を紛らわす為

精神集中をしてみたり

星空の空を眺め詩を考えてみたり

このまま眠ってしまえば良いと羊を数えてみたりしてみたが

……何か余計腕の中の彼女が気なる


まずい、

眠れば明日、目が覚めても

彼女の平手打ちに甘んじようと思っていたが

仲々上手くいかない

むしろ前より目が冴えてくる


ふわり

鼻先に彼女の髪が触れ

柔らかい感触と匂いに包まれる

気づかないようにしていたものが

だんだんと実感を帯びてくる

その時

彼女が何かを呟く

……お父さん…

…………………………

今までの気持ちは吹き飛び

代りに胸の奥からは

愛しいという気持ちが増し

彼女の肩を優しく抱きしめる

安心したのか幼子のように笑う

そんな寝顔を見つめながら

穏やかな気持ちに包まれ

今までの眠気が嘘のように

襲ってきて、そのまま眠りについた


――

明け方の日の光をじわじわと感じる

…!

腕の中、動く気配がする

彼女が目を覚ましたようだ

動揺し抜け出そうとしているが

すぐには離す気にはならず

寝ぼけたふりをして

腕により一層力を加え

彼女を引き寄せてみる

「レイ!!起きて!」

今度は大きな声で起こそうとする

渋々答えるように寝ぼけ眼で

「なんだ…?」

「寝ぼけないで!どっどうして貴方がここに!?」

「どうしてだ?昨日のことを覚えておらんのか?」

慌てる彼女をからかいつつ

「昨日?」

「ああ、」

「…なにがあったの…?」

自分は何かやらかしてしまったのかと不安そうな顔で聞いてくる

それに噴出しそうになるのを堪えながら

「いや?ただ寝ぼけて俺にしがみついて離れてくれなかっただけだ」

正直にそういうと

みるみる申し訳そうな顔になり

「そうだったの…ごめんなさい」

「まあ悪くはなかったがな」

「な!」

「どうだ、まだ早いようだしこのまま一緒に寝るか?」

「いっいいわよ!!」

「フッ…遠慮するな」

「してないわよ!どーゆう神経してるの!!」

そういいながら、腕の中から抜け出そうとする

笑いを堪えながらそのまま引き寄せようとすれば


ばぁっしぃぃぃぃぃん!!


彼女の平手が見事に決まった…

緩んだ腕の中から素早く抜け出していく彼女

痛む頬をさすりながらしばらくその状態でいると

奴が帰って来ていたようだ

何事かと思ったのか凝視してくるが

それを無視し

東の空から昇る朝日を眩しく見つめた


はぁ…


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