カサンドラへ




〜 日射病 〜


カサンドラへの道すがら

荒れた荒野に

じりじり

じりじり

照りつける

今日の異常な暑さにへこみつつ

足の歩みを進めてく



どさり



何の予告もなく


糸が切れた人形が

かくんと

落下するように彼女が倒れた

『!』

突然の事に慌てて抱き起こそうとするが

『待て』

奴がそれを制し


『日射病のようだ』

彼女に秘孔を軽く施す

よくよく見れば

うっすら顔は赤く

荒い息

額に手を当てれば

熱をもっていた


周りを見渡せば揺らぐ陽炎

遠くにはかすかに逃げ水が


確かに何も被らずこの熱さの下を歩くのは自殺行為


ごそごそ

懐を探れば、持っていたのは女物

そう野党をおびき出す為の例のアレ

ケンシロウからは

”そーゆー趣味があったのか”という

視線が痛かったが

ないよりはマシだろうが…

そ知らぬふりで

例の布を頭から被り全身を覆って陰を作ると

彼女に日が当たらぬよう抱えあげ日陰を探す







ひんやりとした

岩壁に涼を取り

横に寝かせる


奴、ケンシロウはどこかに

湧き水がないかと探しに行き

隣に腰をおろし彼女を見やる

先程よりは楽になった様だ

奴の秘孔もあるだろうが…

頭を高くして寝かせ

手持ちの水を飲ませた後

息遣いも軽くなった

じっと眺めていると

……すう

まだ、少し荒い息遣いが聞こえ…

………はぁ


………………………………

…いかん、いかん、いかん、いかん、!!!

首を大きく振り

不埒な考えを降りほどき

ついでに頭を後ろの岩に

ごん

音を立て強めにぶつけておく

ずきずきとする頭を抱えつつ


少しはましになるかと思い

そっと額に手を当ててみる



気持ちいいのか

彼女の表情が和らいでいく

それにつられてこちらも

微笑んでしまう



こうしていると思い出す

幼い頃両親は畑仕事で忙しく

なかなか自分達の面倒は見れず

自然と妹の世話を自分からしていた事を

子供の頃、体が弱くよく熱を出したりし

医者に連れて行ったり付き添ってやったり…

そのせいで心配性になり

周りから"シスコン"呼ばわりされたが……

(無論言った奴には鉄拳制裁をしておいた)








………………

気配が動く

目が覚めたようだ

だが

『………あ』

『おい?』

ぼうっとした様子で何かおかしい

まだ半分覚醒してないようだ

その時

彼女が額に手を当てている

自分の手を取り頬にすり寄せた


『!!』


不意打ちだったそのまま固まり

彼女の成すがままになる


すり…すり…


彼女の柔らかいなめらかな頬の感触を感じ


ぐはぁっーー!!

まずい非常ーーにまずい

先程振り払った不埒な考えが蘇えりそうだった

表面上は平然としつつ内心は冷や汗だ

全身に緊張が走る


振り払おうにも振り払えず

身体がわなわなと震えはじめる

これなら敵を相手に戦うほうがましだ


”こんな時にどうしたんだ救世主!!”

奴への悪口雑言を思いつくだけ思いつき

必死に耐え忍ぶ




はぁ…

指にかかかる吐息

彼女のとろけるような笑顔

絡みつく癖のある栗毛

それを眺めては…

”早く帰ってこい!!”

と思いつつ






じり、じり、じり、…






ああ…まだ日は高い


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