砂音






〜砂音1〜


ざくりざくり



砂を踏む音がする

ぎらぎらと照りつける

灼熱の砂漠の中痛む身体を引きずりながら進んでいく

あの男の居城から抜け出し

幾日過ぎたろうか

なぜか追手は来なかった

かわりに野党に襲われたりもしたが

男の下で学んだ戦闘術が

なんとか自分を守っていた

だがやはり無傷ともいえず

身体のあちこちに傷ができた

幸い致命傷には至らず

今もこうして村を目指して歩いている

ざくりざくり…


ずるリ



暑さで視界が霞む

でもここで倒れるわけにはいかない

自分に叱咤する

ふらつくな足を踏ん張れ

背を伸ばせ前に進め

動け!ここを抜ければ村は目と鼻の先だ

そう

村を弟―コウを守らなくては



父と母が…




オトウサン…オカアサン…

瞳から熱いものがこみ上げてくる

顔を上げる

――死ぬものか

どれだけ自分の手を汚し血に塗れたとしても

屍を築いたとしても

生きなくては

だから―

泣くな!!




ざくりざくり…

再び歩き出す


あの男は背の刻印と同時に一生残る傷を残したのだ

ユダ

忘れるものか忘れるものか

この憎しみがある限り生きていく

生きて戦い続けよう

そんな自分は女ではない


鬼―



戦場を渡り血を啜る

鬼となろう

そうすれば

いつか



また


あの男に巡り合うのだろう― 




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