ENDLESS LOVE

天国からの贈り物




-南斗の使者-

月の輝く夜
一人の初老の男がとある村へ辿り着いた。
小さな家の前に立つと、そっとドアをノックする。
ドアが開くと、中から一人の幼い子供が現れた。

「おじちゃん、だあれ?」

愛くるしい眼をして男を見つめる。

男はその子供に、どこか懐かしい面影を感じた。
しばらくすると、奥から声が聞こえる。

「レオ、お客様なの?」

「うん!知らないおじちゃん。」

「失礼な事を言ってはだめよ。」

一人の美しい女性が現れた。

「息子が失礼致しました。どちら様で?」

「私、南斗の使いの者で、リョウケンと申します。
 マミヤ様でいらっしゃいますね?」

「はい、そうですが・・・」

「レイ様から、マミヤ様へお渡しするようにと
 お預かりしておりました品物をお持ちしました。」

「レイが・・・私に?」

「レイ様がアイリ様を助け出す為、何も告げず一人村を出て行った後、
 私は、後を追いましたが、行方はわからないままでした・・・。
 しかし、ある日突然、レイ様が現れ、あなたにお渡しするようにと、
 こちらを預かりました・・・。
 自分は生きて帰れるかどうか、わからないからと・・・。
 本来ならば、すぐにお届けに伺うはずでしたが、こんな時代です
 どこの村も野盗に襲われ、あなたの居場所もわからないまま、 月日が経ってしまいました。
 でも・・・ 今夜こうしてあなたにお会いする事ができた・・・。」

「ご苦労されたのですね・・・
 でも・・・  レイはもう・・・」

うつむいたまま、マミヤは言葉を詰まらせる。

「存じ上げております。見事な最期であったと・・・。
 そして、マミヤさん、あなたの為に戦った事も・・・。
 レイ様は義の星の漢、あなたの為に戦えた事を 誇りに思っていたことでしょう。」

そう言うと、リョウケンは真っ白な箱をマミヤの前に差し出した。

「レイ様から託されたお品物です。どうか、ご覧になって下さい。」

そっと手をのばすマミヤ。
箱を開けた瞬間、大粒の涙が溢れ出す。
かつてレイがマミヤに約束した、純白のケープがそこにあった。

「レイ様は、女であることを捨て、
 一人の戦士として戦っているあなたの姿に、心を痛めておりました。
 あなたが、女として幸せをつかめるようにと・・・。」

 マミヤは純白のケープをそっと手にとった。

「ああ・・・レイ・・・」

マミヤの頬を涙が伝う。

「ママ、どうしたの?何がそんなに悲しいの?」

レオが心配そうにマミヤの顔を覗き込む。

「レオ・・・ 
 このケープはね・・・
 パパが、 ママの為にプレゼントしてくれるって約束していたものなの・・・。
 だからね・・・ だから・・・」

涙で言葉にならない。

すると、レオがケープを手にとりマミヤにそっと掛けた。

「ママ、とってもきれい・・・ 
 パパからのプレゼントなんだよ。 
 泣かないで・・・ 」

レオの小さな手がマミヤの頬を優しく撫でる。

「やはり、この子はレイ様の・・・?」

マミヤが小さくうなずく。

「レイ様は、ご存知で?」

「いいえ・・・。
 彼がこの世を去った後、この子が産まれました。
 もうすぐ三歳になります。」

「そうでしたか・・・。
 初めてこの子を見た時、懐かしさを感じたのはそのせいですね・・・。
 目元がレイ様によく似てらっしゃる・・・。」

すると、レオが自慢げに話し出した。

「おじちゃん! パパはね、とっても強かったんだよ!
 ママや村の人達の為に、いっぱい戦ったんだ!
 ボクも大きくなったらパパみたいに強くなって、ママを守るんだ!」

偽りのない大きな瞳に、リョウケンの目も涙でかすんだ。

「限られた時間でしたが、私達は一生分愛し合いました・・・。
 もう姿を見る事も、語り合う事もできないけれど、
 レイはずっと私の心の中で生きています・・・。
 だから・・・ 私は幸せです・・・
 彼はこの世で一番大切な宝物を残してくれたのだから・・・。」

「マミヤさん・・・
 レイ様があなたの為に、命を賭けて戦ったことがよくわかりました。
 姿は見えなくとも、きっとあなた達親子を、見守っている事でしょう・・・。
 あなたにお会いできてよかった・・・。」

「リョウケンさん・・・
 いつの日か、この子が父の後を継ぎたいと願う時がきたら・・・
 その時は・・・どうか、この子をよろしく頼みます。」

「わかりました・・・いつまでもお待ちしておりますよ・・・。」

リョウケンはマミヤの家を後にした。

「おじちゃん!元気でね!!」

無邪気に笑うレオ。
リョウケンの姿が見えなくなるまで手を振り続ける。

「どうか、ご無事で・・・」

マミヤはレオを優しく抱きしめた。






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