星の涙






「今日も雨降りだね・・・」



少年は、雨の日がキライだった。

雨が降るとお星様を見ることができないから。

大好きな人に、おやすみの挨拶ができないから。

遠い夜空を見上げながら 少年は淋しそうに呟いた。





「ママ・・・、雨はお空の涙なのかな?

 お空が泣いてると お星様が見えないし

 パパにおやすみも言えないよ。」



「レオ・・・お星様が見えなくても 

 パパはちゃんとレオの事を見ているわ。

 だから、おやすみを言いましょうね。」



「うん! おやすみなさい、パパ・・・。


 そうだ! ボク、ママに見せたいものがあるんだ」 




レオは部屋に戻ると何やら手に取りマミヤに差し出した。




「あした晴れますように!って作ったんだよ 」




レオの小さな手の中には、てるてる坊主が三つ、仲良く並んでいた。




「あしたは、レオにとって初めての運動会だものね。

 とっても上手にできてるわ。

 それに、ちゃんとお顔もある。」



「アイリとリンに教えてもらって作ったんだ!

一番大きいのがパパで、その隣がママ、

一番小さいのがボクだよ。」



「うふふ・・・この顔、パパにそっくりよ。

 三人とも楽しそうに笑ってる。」



「ホント?アイリもそう言ってた! 

 夢の中に会いにきてくれるパパは いつも笑ってるんだ」




夢中になって話すレオ。

その愛くるしい笑顔はマミヤにとって宝物だ。




「パパはレオに会いにきてくれたのね。
 
 きっとレオがいい子にしてるからよ。

 ママ、羨ましいな。」




一瞬淋しげな表情をするマミヤ。

彼女にとってレイとの想い出は悲しいことばかり

彼の笑顔を見たのは、別れの時、たった一度だけだった。

マミヤは、レイの忘れ形見、レオの笑顔を見つめながら

もう二度と見ることのできない 彼の笑顔と重ね合わせた。





「ママ・・・どうしたの? 」




心配そうにマミヤの顔をのぞきこむ。




「ちょっとパパのこと、思い出しちゃったの・・・」



「ねぇ、ママ・・・
 
 パパのこと、はなして。

 ボク、パパのこともっと知りたい。 」



「パパはとっても勇敢な拳士だったわ・・・

 村の人たちや、バット、リン、アイリの為 勇敢に戦ったの。

 ママも一緒に戦ったのよ・・・

 辛い事もあったけど、今は彼との数少ない大切な思い出。

 でもね・・・パパは、皆を守る為に犠牲になって・・・

 長く生きられなくなってしまったの。

 それでもパパは、傷ついた体で、

 ママを救う為に、残り少ない命をかけて戦ってくれた・・・


 パパと一緒にいられたのは、ほんの僅かな時間だったけれど

 人を愛する事の喜びを教えてくれた・・・。

 そして、大切な宝物、あなたを残してくれた。


 パパがさよならをする前に、ママにこう言ったの。

 "産まれてくる子供の名は、勇ましい子、レオと名付けてくれ" と・・・」



「勇ましい子?」



「そう、勇気のある子という意味よ。

 今こうして私達が平和に暮らしていけるのも、パパ達のおかげ。

 レオには、パパのように勇敢で強くあってほしい。

 だから、この先どんなに辛い事や悲しい事があっても

 負けないで、強く逞しく生きてほしいの。」



「ボク、パパみたいに強くなれるかな?」



「もちろん! パパの子だもの。」



「よーし!あしたは一等賞とって

 パパとママに プレゼントするね!」



「きっとパパも応援してるわ。」



「あした、天気になぁ〜れ!!」





窓の外、雨は止み、

月の明かりに照らされた三つの影が

仲良く並んでいた。





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